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2015年1月12日 (月)

レヴィ=ストロース「サンタクロースの秘密」を読んで

本書にはレヴィ=ストロースの論文「火あぶりにされたサンタクロース」と、その解説として訳者の中沢新一が書いた「幸福の贈与」が収められている。

「火あぶりにされたサンタクロース」はサルトルの主宰する雑誌に、若い頃のレヴィ=ストロースが投稿した論文で、サンタクロースからのクリスマスの贈り物を、冬至に訪れる死者たちを代表する者としての子供たちに贈って、死者たちに大人しく死者の世界へ帰ってもらうための古代からの行事の名残だと断じている。本来は王の色である赤い服を着たサンタクロースは、この死者を送る祭りのための、臨時の(偽の)王である。

ヨーロッパにはキリスト教以前から、冬至には死者たちがこの世に還ってきて、生者が死者に贈り物をするという風習があったらしい。そして子供たちは、まだ成人儀礼(イニシシエーション)を受けておらず、死者の世界に近い者たちとして、死者の代りに大人たちから贈り物を受ける権利を有した。

実はこういった冬至の祭りは、古代ローマ時代のサトゥルヌス祭りだけでなく、世界各地の古い祭礼に似たようなものがあるとか。

本書は冒頭で、1951年の12月24日に、フランスのディジョン大聖堂前の広場において、サンタクロースが火あぶりにされたことを伝え、当地のカソリック教会がサンタクロースを異端者として火あぶりの刑に処したことを、そして方々からこの過激な行為に非難の声が上がったことを伝えている。

教会としては、それまで学校で行われてきたクリスマスイブの伝統的な行事が、サンタクロースの登場によって行われなくなったことを憂いて、このような行動に出たらしい。

しかし見ようによっては、教会の判断は正しかったとレヴィ=ストロースはいう。確かにサンタは異教の匂いが濃厚である。ただし、サンタを火あぶりにしたことは、この異教の王を祭りの最後に火あぶりにし、あの世に送り返す古代の祭りを再現することにもなり、教会の意図とは逆に、この異教的祭りの永遠性を証明してしまった、と彼は指摘している。

サンタの贈り物が最初は死者への恐れの現れであったのが、今の様な心温まる家族的行事に変ったのは、昔のような死に対する恐怖心を現代人は忘れることができたからだろう。

ところで、日本では子供への贈り物がクリスマス以外にお正月にもあることを思うと、お正月のお年玉の本来の意味も、元は死者への贈り物だったのかもね。

それに、日本ではお盆の季節に死者が帰ると考えられてきたので、クリスマスプレゼントが本来は死者への贈り物だったと言われても、ぴんとこないかもしれませんね。

そんなこんなで、日本では12月24日は、恋人達が愛を語る日になっていったのかな。これも死に対する生の追及だと、言えなくはありませんが。

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